2016年9月に鳴り物入りでMVNO市場に参入したLINEモバイルだが、販路がネットのみと狭く、“知る人ぞ知る存在”だった。知名度が抜群に高いLINEの新規参入で、カウントフリー機能も話題を集める一方で、「どこで買えるのか分からない」「契約しようと思っても発送の時間がかかる」といったユーザーの声があったのも事実だ。LINEモバイルにとっても、この約半年は準備期間に近い状態だった。ネットのみでスタートし、徐々にユーザーを広げつつ、反応をうかがっていたというわけだ。
そのLINEモバイルが、3月についに本格展開を開始した。手始めに、10の家電量販店に即時開通カウンターや専用カウンターを設置。これまでネットのみだったLINEモバイルが、ついにリアルに進出した。合わせて、2017年中にユーザーとの“タッチポイント”を100以上に増やしていく方針だ。家電量販店への拡大と同時に、女優の「のん」さんを起用したテレビCMもスタートさせ、接点と同時に知名度の拡大も図る。
サービスにも磨きをかけていく方針で、初夏には「MUSIC+」プランのカウントフリー対象を増やすことを明らかにした。同じタイミングで、未導入だった音声通話定額も開始し、万全の体制を整えていく。では、3月以降、どのような方針でLINEモバイルの運営に臨んでいくのか。LINEモバイルの嘉戸彩乃社長に戦略や今後の方針をうかがった。
LINEモバイルの嘉戸彩乃社長―― まず、家電量販店に設置されたカウンターのことをうかがっていきたいと思います。オープン初日にビックカメラ有楽町店を取材しましたが、大きさには驚かされました。
嘉戸氏 リアル(店舗)をやることはずっと決まっていた状態で、いつやるのかというロードマップを半年間チェックし続けてきました。もともとLINEモバイルは、ショップ展開を見すえた企画にしていたんです。立ち上げのとき、量販店などのショップの格安SIMコーナーで、店員さんが説明しやすいものを作るのがキモでした。プランがシンプルだと言われますが、それもショップ展開を見すえたものだったんです。
店頭にいる方は大変な思いをされています。これをもっと楽にしなければいけないという正義感もあり、お客さんがどうやってプランを決めているのかをずっとヒアリングしてきました。店頭に張って聞き続けていたので、怪しいと思われたかもしれませんが(笑)。
―― えっ。それは、ずっとカウンターの横に立ってたということですか。
嘉戸氏 はい。客としてずっと立っていました(笑)。お客さんは、何を使っているというところから入ります。LINEが中心だからこの1GBプラン、他のSNSも使うからこっちというようなことですね。それをもって、おそらくカウントフリーがウケるだろう判断しました。使い方がいくつかにパターン化されているので、○○プランという利用シーンごとのプランがいけるということですね。
フィルタリングが無料になっているのも、(有料だと)レ点で説明するのが面倒になるからです。これも、原価的に何%までだったら許容できるのかを考えて決めてきました。
もともと、ショップ展開は春、CMも春と決めていて、それに絶対合わせるのを目標として持っていました。最初にやるのも量販と決めていました。
3月15日(一部3月18日)からビックカメラとヨドバシカメラの計10店舗でSIMカードの即日受け渡しを開始―― リアル店舗が始まって2日(取材時)ですが、感触はいかがでしょう。
嘉戸氏 量販店さんも数字的に喜んでいるみたいですよ。週末のイベントも急きょ強化されたようです。量販店さんは初速を見て週末どうするのかを決めますが、場所によってはトップダウンでどんどん決まっていきます。
展開もさまざまで、18日にオープンした梅田のヨドバシは、8坪近くあってキャラの人形とかも置いてあります。専用カウンターもあれば、キャラクターを置いた大きいところもあり、共通カウンターの中の1つということもある。ショップ展開は最初にやりやすい方法を取ろうと思っていました。ただ、さばく場所がないといけない。お客さんに来ていただかないとどうしようもないですからね。
―― 100店舗に拡大してく方針ですが、この中には独自ショップも含まれるということですよね。
嘉戸氏 実は100“店舗”とは言ってないんです。あれはタッチポイントで、お客さんがLINEモバイルのことを聞ける場所があったり、契約できる場所があったりで、数タイプあります。はっきりと書けなかったのはそういうところですね。
―― サポートに特化したようなところも含まれるということでしょうか。そこでついでに契約できてもいいような気はしますが。
嘉戸氏 まだ構想段階ですが、エントリーパッケージを買っていただき、無事に開通できなかったときにサポートを受けてもらうというようなことも考えています。これはチャネルさんと話し合わなければなりませんが、タッチポイントに来ていただく流れは作らないといけない。かといって、そこに行き過ぎてもまずいということで、ネットで解決させることも重要です。「いつでもヘルプ」があるのはそのためですね。
いつでもヘルプはLINEで聞けるもので、あれはクレーム処理ではなく、店舗の役割も持っています。何か聞けないことがあったとき、分からないことがあったときに、その場で聞けるところという位置付けです。
―― ヘルプはAIで返すものと、有人がありますが、比率はいかがですか。
嘉戸氏 AIと有人では、大体7対3ぐらいの割合になります。AIのうち半分が営業時間内、残りは営業時間外ですね。
―― 思ったより、皆さんAIだけで解決してしまうんですね。
嘉戸氏 それは、有人の方が契約者しか使えないサービスだからですね。AIはまだまだ勉強させないといけません。極端な例で言うと、のんさんのCMを流したら、AIに「CMを教えてください」という質問が来ますが、その答えがまだ決まっていない。そういう質問を1つ1つ見て、毎日答えを作っています。お客さんから質問をいただき、答えて、(役に立ったかの質問で)「いいえ」になったとき、こちらからどうしなければいけないのかの分析が始まる感じです。
―― LINEだと軽い気持ちで質問できるので、内容も多岐にわたりそうな印象があります。
嘉戸氏 本当に軽い気持ちで聞いてくるので、ビックリしました(笑)。でも、このサポートには「ありがとう」と言ってもらえるんです。「こんなことにも答えてくれる」と喜んでいただける。メール、電話より、お客さんとのノンバーバルな部分でのコミュニケーションもすごいと思いますし、見ていてすごく喜ばしいですね。
―― LINE全体として見ると、キャラクターショップの「LINE FRIENDS STORE」も運営されていますが、そこでSIMカードを売るというようなことはあるのでしょうか。
嘉戸氏 キャラクターのお客さんはキャラクター目当てで来るので、そこにSIMを置いてもいいのか? というのはあります。それは無粋なことで、お客さんのためにならない。ただ、あれを完全にやり直して、FRIENDS STOREの隣にLINEモバイルショップがあるという形だったらありかもしれません。
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