【ワシントン=中村亮】米ホワイトハウスは5日、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が6日にスイスのチューリヒで中国外交担当トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員と会談すると明らかにした。米中の衝突回避に向けて協議へ臨む。
中国外務省も6日、楊氏とサリバン氏が会談すると発表した。
ジャンピエール米大統領副報道官は5日、中西部ミシガン州に向かう大統領専用機内で記者団に対し「我々は米中競争に責任をもって対応しようとしている。それが会談の目的だ」と説明した。米国は南シナ海や台湾海峡で軍事活動を増やしつつも、中国との偶発的な衝突を招かないよう対話も探ってきた。
米中高官は、10月末にイタリアで開く20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせ、対面形式の米中首脳会談を調整する可能性がある。バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は9月上旬の電話協議で、米中の緊張緩和に向けて努力することで一致していた。
一方でブルームバーグ通信は5日、中国は習氏が現時点でG20首脳会議に対面形式で参加しない方針を議長国イタリアなどに伝えたと報じた。最終決定をしていない可能性があるとしており、米国の出方を見極めていることも考えられる。
政策面では気候変動対策やアフガニスタンのイスラム主義組織タリバンへの対応について話し合うとみられる。
米中は対話の糸口を探り、駆け引きを続けてきた。米通商代表部(USTR)は4日、中国との貿易交渉を再開する方針を示した。米司法省は9月下旬に中国の華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を解放し、約3年にわたる米中の懸案を解決した。
中国も孟氏の解放後、拘束していたカナダ人を解放した。習氏は9月下旬の国連総会でビデオ演説し、海外で石炭火力発電を新設しない方針を表明した。米政権が重視する気候変動対策で協力のシグナルを送ったとみられていた。
米中に横たわる根本的な問題の解決は容易ではない。台湾の国防部(国防省)は4日、中国の戦闘機など56機が防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。米国防総省は「予期しない事態のリスクを高める行為だ」と批判し、挑発行為を停止するよう求めた。
中国の新疆ウイグル自治区や香港の人権問題をめぐっても米中は平行線をたどる公算が大きい。