You are using an outdated browser. For a faster, safer browsing experience, upgrade for free today.

USB接続化で終わらず高速化まで実現した「4倍速フロッピーディスクドライブ」:スイートメモリーズ File053

[名称] 4倍速USB接続フロッピーディスクドライブ(FD4X-IMJ)[種類] 磁気ディスク[記録方法] 磁気記録[サイズ] 104×145×18mm[容量] 720KB~1.44MB[接続] USB2.0[電源] USBバスパワー[登場年] 2003年頃~

連載:スイートメモリーズ

「4倍速USB接続フロッピーディスクドライブ」(以下、FDD)はディスクの回転数を4倍にし、高速アクセスを可能としたFDD。多くの人がFDを使わなくなったであろう2003年中頃から登場し、複数のメーカーから製品が発売されました。

そもそもFDは1990年代前半には使われることが少なくなっていき、後半になると3.5インチだけがかろうじて生き残っているくらいにまで存在感が薄れていました。その理由のひとつに、扱うデータが大きくなってきたというのがあります。せいぜい1.44MBしかないFDを何枚も使うより、ZipやMOといった高速で大容量のメディアを使う方が簡単で快適ですから当然です。

また、少しずつノートPCのシェアが大きくなっていく中で、スペースの制限から使用頻度の低いデバイスが外部に出されることが多くなり、FDDはそのターゲットとなりやすかったというのも理由のひとつでしょう。搭載されなくなれば使われなくなるのは自然な流れ。いくら専用ケーブルで接続できる外付けFDDが用意されていたとしても、ひと手間かかるのであれば使われにくくなります。

とはいえ、プリンターなど周辺機器のドライバーディスクでFDは意外としぶとく残っており、このためにFDDが必要だという場合も少なくありませんでした。こんなときにありがたかったのが、1998年に登場したUSB接続のFDDです。これが1台あればUSBを持つPCすべてでFDDを使い回せるため、PCがFDDを内蔵している必要がありません。今でいえば、光学ドライブがこの立ち位置ですね。

ノートPCでも1998年以降は専用ケーブルで接続するFDDではなく、USB接続のFDDをオプションとして採用することが増えました。といっても、USB接続になったからといって使用頻度が高くなることはありません。このままどんどん使われることがなくなり、フェードアウトしていくデバイスだと思っていたのですが……2002年になって、なぜか突然2倍速のFDDが登場します。

2倍速といっても、単純に回転数を2倍にすればいいというものではなく、その速度で読み書き可能なヘッド、磁力を書き換えられるディスクが必要となります。そのため、通常であればドライブもメディアも新たなものが必要となるはずで、つまりそれは、いわゆる次世代FDとなるわけです。

残念ながら2002年といえば、すでに多数の次世代FDが夢破れていた頃なので、新たに開発するとは思えません。ひとつ思い当たるのは、HiFDなど次世代FD開発時の技術を使うことで、ドライブの高速化が可能になったのではないかということです。

幸か不幸かFDは300rpmという低回転でしたから、高回転化の余地は十分あります。また、磁気ディスクの製造技術も上がっていたでしょうから、ディスク側もこの高速書き換えについていけたのではないでしょうか。

FDDの高速化に需要があったのかは今でも謎ですが、さほど変わらないコストで高速化できるのであれば、付加価値としては十分ありと判断してもおかしくないでしょう。

2003年になると、更に高速な4倍速FDDが登場しました。前置きが長くなりましたが、今回紹介するのは、この4倍速に対応したFDDです。

せっかくなので、同じイメーションの等速ドライブと並べてみました。シルバーの方が4倍速ですが、4倍速だといっても見た目の形は等速のFDDと同じ。4Xと書かれている部分で、かろうじて区別できる程度です。


 USB接続化で終わらず高速化まで実現した「4倍速フロッピーディスクドライブ」:スイートメモリーズ File053

USBケーブルは背面から直に生えているタイプ。USB接続のFDDではこれが一般的なので、4倍速だからといって特別なわけではありません。

ちなみにイメーションのUSB接続FDDは、速度に関係なくMODEL NO.に「D353FUE」と書かれています。

左が4倍速で右が等速のものですが、まったく同じです。たしか、2倍速FDDも同じMODEL NO.でした。手元にあるはずなのですが、荷物の山に埋まってどこにいったか分からず、発掘できませんでしたが……。

気を取り直して、せっかく実機があるので本当に高速なのか試してみましょう。

Windows 10のPCで2HD FDのフォーマット(1.44MB)を実行してみたところ、等速では約122秒かかっていたものが、4倍速では62秒まで短縮。また、約960KBのファイルを書き込んでみたところ、等速では約38.2秒かかっていたものが、約18秒にまで短縮されていました。確かに高速化しています。

ただし、4倍速ではなく2倍速相当です。

不審に思い、別の4倍速FDDで速度を測ってみたのですが、結果は変わらず2倍速相当でした。PCを変えて3台ほどで試してみましたが、こちらも変化はありません。

何かヒントはないかと2倍速FDDのスペックと見比べていたところ、インターフェースの速度が2倍速FDDまではUSB1.1、4倍速FDDではUSB2.0となっていることに気が付きました。

もしやと思い、「HWiNFO」を使って接続スピードを確認してみると、思った通りUSB1.1での接続となっていました。USB3.0ハブ経由で接続していたせいかと疑い、PC本体のUSBに接続してみたり、あえてUSB2.0ハブ経由で接続したりとイロイロ試してみたのですが、何をやってもUSB1.1でしか認識してくれません。

もしかするとWindows 10では、USB接続FDDという時点でUSB1.1だと決め打ちされているのかもしれないですね。そもそも対応OSはWindows XPまでとなっていますし、USB1.1だとしても使えるだけありがたいのですが。古いUSB2.0ボードを増設して使えば認識するかもしれないので、そのうち試してみたいと思います。

初期にはPCのメインストレージとして活躍し、次にはリムーバブルディスクとして一時代を築いたFD。次世代FD争いが勃発するも、生き残ったのは本家本元のFDだったというのは、なかなか興味深いところです。しかもその生き残った先で、さらに4倍速化という進化をしていたというのは面白いですね。

なお、私が調べた範囲となりますが、FDDの生産を最後まで行なっていたのはワイ・イー・データで、2011年10月に販売終了となっていました。

連載:スイートメモリーズ

参考:

フロッピーディスクドライブ(FD2X-IMJ、FDX-IMJ), イメーション, WayBack Machineワイ・イー・データ 沿革, WayBack Machine