中国の少数民族ウイグル族に対する扱いをめぐり、2022年北京冬季オリンピックのボイコットを求める声が上がる中、イギリスのボリス・ジョンソン首相は24日の下院で、ボイコットに否定的な考えを示した。
野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は、大虐殺が「私たちの目の前で起こっている」とし、イギリス代表チームの北京大会の参加取りやめを求めた。
ジョンソン首相は、イギリスが「中国に責任を問うための、国連での国際的な行動を主導」していると説明。イギリスは「通常」、スポーツ大会のボイコットを支持していないと述べ、デイヴィー氏の呼びかけをはねつけた。
英オリンピック委員会(BOA)はジョンソン首相の見解を「全面的に支持」するとした。
「私たちは冬季五輪をボイコットすることが正しい解決策であるとは思わない。この瞬間のために全人生をかけてトレーニングに励んできたアスリートが自国を代表して大会に参加し、競えるべきだと考えている」と、BOAの広報担当者は述べた。
「1980年モスクワ五輪でわかったとおり、スポーツ大会のボイコットに効果はない。アスリートにペナルティを科す一方で、より大きな政治的問題が対処あるいは解決されないまま残ることになる」
自由民主党のデイヴィー党首は、BOAと英パラリンピック委員会(BPA)のトップに宛てた書簡で、中国が新疆ウイグル自治区の収容施設を閉鎖し、「ウイグル族に対する民族浄化」をやめない限り、選手を大会に参加させないよう求めた。
また、ウイグル族に対する強制労働や拷問、性的暴行、そのほかの人権侵害行為を終わらせるよう求めている。
下院で何と
自由民主党のデイヴィー党首は下院で、「今日、数百万人ものウイグル族が残忍な政権の下で、恐怖の中で生活している」と述べた。
「BBCや国際メディア、人権NGOが強制労働収容所や、女性がレイプされ、不妊手術を受けさせられ、家族が引き離されている実態を報じている。これは私たちの目の前で起こっている大虐殺だ」
ジョンソン首相はデイヴィー氏の主張は「新疆ウイグル自治区のウイグル族に対するぞっとするキャンペーンを強調する正しいもの」だとした。
「だからこそ、外相は英企業がこの違反行為に加担したり、そこから利益を得ないようにするための政策や措置を設定した」と、ジョンソン氏は付け加えた。
「私たちは中国に責任を問うための、国連での国際的な行動を主導しており、友人であるアメリカや世界中のパートナーとの連携を続けていく」
一方でジョンソン氏は、「私たちは通常、この国でスポーツ大会のボイコットを支持していないし、これは英政府の長年の立場だ」と述べた。
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中国政府への非難、「抑圧」されるべきではない
BBCのダン・ローアン、スポーツ編集長が確認したデイヴィー氏の書簡には、「あなた方が派遣するのはイギリスの最高の選手団だ。新疆ウイグル自治区で起きていることについて、私たちが知っていることを考慮すれば、いかなる状況であっても、選手たちが中国共産党のプロパガンダに利用されるのを認めるべきではない」と書かれていた。
そして、もしイギリス選手団が大会へ派遣されるのであれば、選手は「中国政府に対する非難を口にするのを抑圧されるべきではない」と付け加えた。国際オリンピック委員会(IOC)の規定では、五輪施設での選手の抗議活動は禁止されている。
イスラム教徒のウイグル族に対する人権侵害について、中国は一貫して否定。ウイグル族が収容されているのは「職業教育訓練施設」だと主張している。
しかし、180以上の組織が各国政府に対し、2022年北京オリンピックをボイコットするよう求めている。ウイグル人組織「世界ウイグル会議」は北京大会を「大虐殺オリンピック」と呼んでいる。
書簡に署名した団体の1つで、チベット人の自由などのために活動する「スチューデンツ・フォー・フリー・チベット」のドルジ・ツェテン氏は、ナチス政権下のドイツ・ベルリンで開催された「1936年のナチス・オリンピックで起こったことが繰り返されるのは不幸なことだ」とBBCに述べた。
ドミニク・ラーブ英外相は昨年10月、新疆ウイグル自治区での人権侵害の規模を考慮すると、スポーツ大会のボイコットを支持しないイギリスの方針に例外を認める可能性があると示唆した。
(英語記事 PM rules out boycott of Beijing winter Olympics)
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