画像=筆者撮影
みなさんは今、メッセージアプリを使用する際に「音声メッセージ機能」を使用しているだろうか。LINEでもInstagramでも、チャット画面を開くとその右脇にマイクの表示があり、現役の機能であるはずなのだが、使っている人はあまり見かけないだろう。 また、日本で普及しているスマホメーカーといえば、圧倒的にAppleが一位だ。先日MM総研が発表したレポートによれば、2021年度上期(2021年4月~9月)の「国内メーカー別総出荷台数シェア1位」はApple(41.1%)で、上期実績としては10期連続で1位を獲得している。スマートフォンに絞っても1位はApple(45.0%)で、2位がSONY(10.7%)、3位がSHARP(10.4%)、4位がSamsung(10.1%)、5位にOPPO(6.2%)が続く。・長文は面倒、音声の方が楽 しかし、一歩日本の外に出ると状況は一変する。筆者は現在ヨーロッパで留学生活を送っているのだが、ヨーロッパの人は、何かあればすぐ音声メッセージだ。国籍関係なく誰もが音声メッセージでやりとりすることを好み、逆に長い文章を嫌う傾向がある。筆者のフラットメイトである30代のスペイン人女性に理由を尋ねたところ、「長文打つの面倒じゃないの?音声の方が楽だと思うけど」と逆に不思議がられた。 また、さまざまな人と交流する際にそれとなくスマートフォンのメーカーをチェックしてみると、高確率でSamsungかXiaomi(シャオミ)なのも印象的だ。2021年第2四半期のヨーロッパにおけるスマートフォンのシェア率は、1位がSamsungで31%、2位がXiaomiの24%で、3位にAppleの20%がくる。同期のスマートフォン出荷台数を見てみると、長年トップの座を守ってきたSamsungをXiaomiが抜いて初の1位。いっぽうAppleは、やはり3位である。ヨーロッパの先進国では比較的支持されているものの、安くて高性能であることの方がヨーロッパ市場では重要視されるようだ。 たとえば、筆者の留学先であるラトビア(バルト海を挟んでスウェーデンの向かいにある小国)では、ソ連からの独立以降、EUに加入して一定の経済成長を遂げたものの、近年は伸び悩んでいて所得平均もまだまだ低いため、Apple製品は手が届かないという話をよく聞く。したがって、シンプルで使い勝手のいい格安スマホを販売しているSamsungのシェア率がダントツだ(街の広告の半分はSamsung)。改めて、ヨーロッパはイギリスやフランスやドイツといった国だけで成り立っているのではない。EU加盟国だけでも27カ国存在し、その経済状況は存外バラバラなのだ。・欧州大学生にアンケート調査。友人とのチャットにどのアプリ使う? そこで筆者は、『ヨーロッパの若い世代のSNS利用についての簡単な調査』をするためにGoogle Formを作成し、留学先大学の留学生グループチャットで回答を募った。回答者の国籍は、フランス人、ドイツ人、スペイン人、アルバニア人、オランダ人、ポルトガル人、ルーマニア人、と、個人的な調査のわりにはさまざまな国の人から回答を得られることができた(回答者にフランス人が多いため、おそらく結果はフランス市場寄りになっている)。ちなみに、回答者の年齢は19-38歳で、最頻値が20歳となっている。 まず、使用しているスマートフォンのメーカーを尋ねた。すると、61%の生徒がApple iPhoneと回答し、先ほどのヨーロッパ市場全体の統計とはかなり違った結果になった。これは、金銭的に余裕のある「大学生」に的を絞って調査を行なったのが影響していると考えられる。ちなみに、2位にはおなじみのSamsungが続き、HuaweiやRealmeという回答も見られた。 次に、「友人とチャットする際、どのメッセージアプリを1番使うか」について質問した。すると、1位は「世界で一番使われているメッセージアプリ」であるWhatsAppが6割強となった。日本ではWhatsAppは全く普及していないが、欧州で最も使用されているメッセージアプリだ。2位にはSnapchatとMessengerが並んでいる。ただ、フランスは他のヨーロッパ諸国と違って「WhatsAppは家族&業務用」という価値観が定着しているらしく、友人との会話には2位の2つが人気なようだ。日本の若者に「LINEは家族&業務用、友人との会話はInstagramのDM」という使い分けが浸透しているのと同じようなものだろう。しかし、今回の調査で「友人とのチャットにInstagramのDMを使う」と回答した人の割合は1割未満で、日本の若年層との大きな違いが見られた。 アンケート調査で目立ったのが、「Facebookは年配世代、TikTokは若年層」という意見だ。特にFacebookについては、「Facebookは親世代か、海外に家族がいる若い世代しか使わない」「Facebookは月3回くらいしか開かない」「Facebookはイベントとか年配者用」という意見が多く見られた。これは日本でもヨーロッパでも共通意見だ(ちなみにWhatsAppはFacebookの親会社・Metaが運営している)。 さらに、「音声メッセージを使うか」という質問に対しては「Yes」が92.3%という、日本人にとってはかなり驚きの結果に。実は、音声メッセージを使わない国は日本くらいで、ヨーロッパ関係なく世界的に音声メッセージは普段使いされているようだ。中国メディアの今日頭条では2016年11月に、「日本人と仲良くなりたければ、音声メッセージは使ってはいけない」と説く記事が掲載されたこともある。今日頭条は、日本人が音声メッセージを使わない理由について「日本において静かな環境は各個人が持って然るべきものであり、それを壊すことは、他人の権利を侵すことになる」と分析している(引用:exciteニュース「え、どうして? 中国人がチャットアプリでよく使う『音声メッセージ』、日本人はほとんどやらないって?」、2016年12月1日掲載)。・音声メッセージの普及度に見るカルチャーの違い たしかに、日本には「静かにするべき場所」が多いし、日本人は自分の声が公共の場で目立つことを恥ずかしがる。こちらに来て数カ国旅をしてきたが、電車内で悠々と電話をしている人々をよく見かけた。彼らにとっては、日本人こそ「面倒なのに長文をわざわざ書く変わった人たち」なのかもしれない。 ただ筆者個人的には、内容が長いのであればあるほど「文章で送って欲しい」と思ってしまう。なぜなら、彼らは頭の中で話すことをまとめる前に音声メッセージに録音し始めるので、録音がひたすらに長くなり、要点もわかりにくい。また重要なことを聞き逃したりすると、録音を何度も聴き直さなければならないのも面倒だ。メッセージを受け取る側のことを考えたら文章のほうがいいのでは、というのは、あくまで日本人的意見なのだろうか。 こうしたことは文化や経済、価値観の違いから生じるギャップであって、どちらが良くてどちらが悪いなどはない。メッセージアプリの機能一つとっても、さまざまな要因が「用途」や「使用頻度」などに大きな影響を与えているはずだ。自分たちが日々を支えるツールやサービスに求める「当たり前」が、“いったいどこで決められ・定着したのか”を考えてみれば、今まで想像つかなかった視点を得られるかもしれない。(参考文献)・https://www.soumu.go.jp/main_content/000692932.pdf・https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2111/11/news121.html・https://www.statista.com/statistics/632599/smartphone-market-share-by-vendor-in-europe/・https://iphone-mania.jp/news-364037/・https://kakakumag.com/pc-smartphone/?id=17284・https://www.excite.co.jp/news/article/Searchina_20161201053/
山口那奈