新春特別企画として、パソコン評論の第一人者であるビジネス書作家の戸田覚氏と、パナソニックでレッツノートの開発を担当する白神和弘氏の対談を敢行! アフターコロナを見据え、我々のワークスタイルはどのように変わりつつあるのか? そして、そこではどのようなパソコンが求められ、レッツノートはどんな考え方で開発されているのか? ハイブリッドワークが「ノーマル」になるこれからのモバイルノートの進化の方向性が、二人の対話から明らかになる。
このページのトピックハイブリッドワークの進展に伴いモバイルノートも大画面にシフト
お二人はこの先、アフターコロナの時代を、どのように見ていますか? 働き方の変化の上で、「もう元に戻らないこと」や「新しく生まれている価値観」とはどんなものでしょう?
戸田 私は、「アフターコロナ」という線引きはもはやないと考えています。コロナがいつ収束するかは誰にもわかりませんから。ずっと「withコロナ」の状況が続くと考えたほうがビジネス戦略的にはいいと思います。収束したとしても、完全に前のように戻ることはないでしょう。私の知っている会社でも、多くの会社がテレワークを導入し、オフィスを縮小したり、移転したりしています。何より、働く人がテレワークに慣れた結果、「テレワークのほうが楽なだけでなく生産性も高い」と気づいてしまったことが大きい。テレワークの良さを知った人は、コロナが収束しても、以前の働き方に戻りたいとは思わないでしょう。
戸田覚氏ビジネス書作家。株式会社アバンギャルド/株式会社戸田覚事務所 代表取締役。ブログ、著書累計150冊以上、連載25本。IT関連、パソコン、プレゼン、企画書、Webドキュメントなど、仕事に関する幅広い著書を持ち講演も多数。YouTubeチャンネルも運営中。白神 同感です。コロナ禍によって、多くの人はオンライン会議やチャットツールなど新たなツールの便利さを知り、もはや以前と同じには戻れない。そこで我々パナソニックはここ最近、「ハイブリッドワーク」をキーワードに、オフィスでも、自宅などからのテレワークでも、同じように生産性を発揮できるモバイルノートをつくることに注力してきました。
実際、モバイルノートにはどのような変化が求められているのでしょう?
白神 14型大画面コンパクトの「レッツノートFV」が好例です。これまでモバイルノートというと持ち運びのしやすさを重視してきましたが、それに加えて画面が大きく、見やすくないと、オフィスで15.6型のノートパソコンを使うのに慣れている方には、自宅で使う時の生産性が落ちるため選んでいただけない。その両方を満たした「FV」は、おかげさまで大変好評をいただいています。
白神和弘氏パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社モバイルソリューションズ事業部開発センタープロジェクトマネジメント部レッツノート プロジェクトリーダー14型大画面とコンパクトな筐体を両立した「レッツノートFV」戸田 もはや「モバイル」というカテゴリーが機能していない気がしますね。昔ながらのモバイルノートは、移動中、あるいは立ち寄ったカフェなどでオフィスと同じように仕事ができることが重視されていましたが、今は出掛けた先で腰を据えて作業をする機会のほうが圧倒的に多い。昔はモバイルノートの画面サイズは12.1型が主流でしたが、今は13.3型、14型、あるいは15.6型のものまである。何がモバイルなのかわからない。それがここ1〜2年の変化でしょう。
白神 実際、業界動向を見ても、モバイルノートの画面は大画面にシフトしていますね。
画面の縦横比にこだわり続けてきたレッツノート
レッツノートシリーズは、12.1型の「SV」、12型ながら2in1の「QV」、14型の「FV」と多様なラインナップを展開しています。戸田さんはそれをどう評価しますか?
戸田 単純に画面サイズの数字でお話するとレッツノートの魅力が薄れてしまうと思います。もともと他社のノートパソコンでは画面アスペクト比は16:9が中心でしたが、レッツノートは、一部例外はあったものの、基本的に16:10を貫いてきましたよね。
白神 ええ。「FV」の前身の14型の「LV」のみ16:9。「QV」はさらに縦方向が広い3:2です。
戸田 数字だけ見ると12型クラスでも、特に縦方向については、レッツノートの画面は他社の13.3型の画面と同じくらい広かった。Windowsでは上下にメニューがあるので、縦方向に画面が広いと編集エリアが大きく取れ、作業性が格段に高いんです。この点は、しっかりと認識しておいたほうがいいし、パナソニックとしてももっとプッシュすべきだと思います。対角線の長さだけ測って、十把一絡げに「この画面は何インチ」という時代は終わりました。
白神 おっしゃっていただいたとおりで、我々はビジネスでオフィス系ソフトを使って作業する上では縦方向の閲覧性が大事、ということで16:10にこだわってきました。最新の「FV」では14型で、しかも縦方向が広いアスペクト比3:2の液晶を搭載していて、作業性が非常に高いのがポイント。ここは声を大にしてアピールしたいです。
戸田 今頃になって他社でも16:10に追随するところが出てきました。ようやく時代がレッツノートに追いついてきたということですね。他社が16:9の画面を採用していたのは、そのほうが低コストだから。よく「レッツノートは値段が高い」と言われますが、そういう側面も価格に反映されていることは知っておいたほうがいいと思いますね。だからレッツノートのラインナップは、実際に店頭で見たほうがいいです。画面サイズなど、Webサイトの写真ではなかなか伝わらないですから。
白神 確かに手に取っていただくとよくわかると思います。「FV」では、通常の13.3型の幅の筐体に、縦方向の長さが15.6型フルHDとほぼ同じ液晶を搭載しています。そういう点を、リアルに見て、感じていただきたいです。
パナソニックとして、「SV」、「QV」、「FV」の3つのラインナップを揃えている理由はどこにあるのでしょう?
白神 旧来から、レッツノートで一番の売れ筋は12.1型です。B5ファイルサイズで持ち運びがしやすいサイズというのが支持されているポイント。そのサイズの中で、いかに画面を見やすくし、操作性を高めるかにこだわってきました。その「SV」の良さを、テレワークで求められる大画面ニーズと合わせてどう実現するか考えて登場させたのが14型ながら軽量コンパクトの「FV」です。とにかく機動性重視の方には「SV」、少し腰を据えてオフィスやSOHO、コワーキングスペースなどで使いたい方には「FV」をお勧めしたいですね。「QV」は、画面サイズは「SV」とほぼ同等の12型ですが、タッチパネルを備えた2in1であるのが特長。さっと取り出して画面を指で操作しながらプレゼンテーションをするなど、「立ち振る舞いながら」使うシーンが多い方に向けたモデルです。例えば対面営業や、製薬会社のMRのような方々を想定しています。
ビジネスパーソンから絶大な支持を得ている12.1型の「レッツノートSV」戸田 私は「QV」をプレゼンテーションのために買ったのですが、最近はWeb会議で使うことも多いんです。ペンを使って手書きで、画面の重要な部分を囲んだり、文字や絵を書き込めたりするのが大きいんですよね。Web会議ではレーザーポインターが使えませんから。2in1として使わなくても、手書きができるだけで利用価値は大きいと感じます。
白神 「QV」はまさしくそういう、直感的な操作ができることを狙ったモデルでもあります。これから企業でもそういう使い方が流行るのではないでしょうか。
戸田 マイクロソフトもオンラインホワイトボード「Microsoft Whiteboard」を刷新し、「Teams」とともに提供していますしね。手書きのニーズは高まりそうです。
タッチパネルを搭載し、2in1でタブレットスタイルでも使える「レッツノートQV」対談には大阪の技術者チームも多数参加。リアルとオンラインを組み合わせた「ハイブリッド取材」はビジモバ初の試み。取材もニューノーマルだ。