スマホやタブレット、ノートPCを充電できるものを探すのには必死になるけれど、どんなタイプの充電器につなぐかにはあまりこだわりがない――。
読者のみなさんにはそういう人も多いのではないでしょうか?
結局のところ、デバイスを充電器につなげさえすれば、電池切れで使えなくなることはないし、それが何よりも大事なことです。
でも、すべての充電器が同じ性能を持つようにつくられているわけではありません。
その時々で手っ取り早く使えるUSBポートやコンセントで充電するのが癖になっている場合は、デバイス本来の性能と比べて、充電速度が大幅に遅くなっている可能性もあります。
「充電器の性能」の基礎知識
たいていの場合、充電器は2つのパーツで構成されています。充電用のケーブルと、電源アダプター部分です。
アダプターは、「ブリック(レンガ)」とも呼ばれる、四角い形をしたコンセントに差し込む部分です。一方、ケーブルは名前でわかるように、アダプターをデバイスと接続する部分のこと。
充電にはアダプターを必要としないケースもあります。
たとえば、充電するデバイスを別のデバイス(PCなど)につなぐ場合、あるいは、USBポート内蔵のコンセントで充電をする場合です。また、ワイヤレス充電の場合は、充電パッドがケーブルの役割を果たします。
一般的には、ケーブルが充電速度に影響を及ぼすことはありません。充電速度を左右するのは電源アダプターです。
アダプターによっては、ほかのものよりも強力、つまり多くの電力をデバイスに供給する能力を持つものがあります。
この能力を測る単位がワット(W)です。電源アダプターを見ると、どこかに「5W」「18W」「30W」というように、この数値が書かれているはずです。
ただし、特定のデバイス専用の充電器については、この記事では取り上げません。あなたが使っているデバイスで決まった充電器しか使えないのであれば、それで充電するしかないのです。
以下で話題に取り上げるのは、主にUSBポートを備えたデバイスです。こうしたデバイスでは、充電にさまざまなケーブルやアダプターを使えるはずです。
意外と難しい「最適な充電器選び」
電源アダプターには実にさまざまなタイプがあるため、自分が使用するデバイスにとって最適なものを簡単に特定できるとは限りません。
また、デバイス側の事情によって、最適な充電器を選ぶのが難しくなるケースもあります。これはスマホに関して特に顕著です。
Appleは他社に先んじて「iPhone」の最新モデルに充電器を同梱しないという決断に踏み切りました。その後、ほかのスマホのOEMメーカーも後を追い、これが新たなスタンダードになっています。
Appleはこの決断について、高まる環境問題への懸念に配慮した結果だと主張していますが、手元に電源アダプターがない消費者は、デバイスを充電できないまま置き去りにされています。さらに言えば、愛用のデバイスにどのアダプターを使うのが「正しい」のか、判断がつかない消費者も置き去りにされた格好です。
とはいえ、過去を振り返っても、Appleがこの点について良心的だったとは言えません。
Appleは長年にわたり、決して高性能とは言えない5WのアダプターをiPhoneに同梱してきました。このアダプターを未だにiPhoneを充電するのに使っているという人もいるでしょう。
これはとても残念なことです。5Wのアダプターでは、iPhoneを充電するのにとても時間がかかるからです。
デバイスを最速で充電するコツ
スマホの場合
あらゆるデバイスには、アダプターから供給を受けられる電流に上限が設けられています。
ただし、設定以上に強力な電源につないでも問題はありません。デバイスには上限を超える電流は流れない仕組みになっているからです。
たとえば、27Wを上限としているスマホを35Wの電源アダプターにつないだ場合、最高でも27Wでしか充電されません。ですから危険なことはないわけです。
また、デバイスの設定より能力が低い電源につないでも危険は生じません。
先ほどのiPhoneの例で言うと、Appleは「Phone 8」「iPhone 8 Plus」「iPhone X」に高速充電機能を導入し、15Wでの充電を可能にしました。それでも、これらのデバイスに同梱されていたアダプターは、5W仕様のままでした。
時間はかかるものの、このアダプターを使えば安全に充電することはできます。ただし、デバイスの充電機能をフル活用するためには、少なくとも15W対応の電源アダプターを買う必要があるのです。
何より大事なのは、使っているデバイスの仕様を確認することです。
たとえば、私が使っているiPhone 8 Plusでは、最高で15Wでの充電が可能です。つまり、12Wのアダプターを使った場合は、このデバイスの充電性能をフルに活用できていないということになります。でも、18Wのアダプターをつなげば、可能な限り最速で充電できるわけです。
一方、「Galaxy Tab 7+」では、45Wの急速充電が可能です。この充電速度を最大限に生かしたいなら、45Wかそれ以上の性能を持つ電源アダプターを使うと良いでしょう。これ以下の性能のアダプターでは、充電にかかる時間が長くなります。
PCの場合
とは言っても、現実問題として対応が難しい場合もあるでしょう。
MacBookのようなノートPCでは、購入時についてくる大容量のアダプターを使うのが性能的にはベストです。
たとえば、「M1」チップ搭載の「MacBook Air」なら30Wのアダプターが同梱されています。
これよりもコンパクトなUSB-Cアダプターを使うこともできますが、充電に時間がかかりますし、負荷がかかる作業をしている場合は、アダプターにつないでいるのにバッテリー容量が目減りすることさえあり得ます。
一方、マシンの充電能力以上のアダプターを使っても、問題はありません。コンピューターは仕様以上の電力は受け入れないようになっているからです。
簡単にまとめると、一般的に言って「アダプターは電力供給能力が高いに越したことはない」ということです。能力が高くてもデバイスに害を与えることはありませんし、可能な限り最速で充電できる確率が高まるからです。
便利だが速度は遅い「ワイヤレス充電」
一方、ワイヤレス充電は便利ではありますが、ケーブルとコンセントにつなぐアダプターを使った、従来型の充電よりも時間がかかるのが常です。
また、最速で充電するには、高速充電に対応したワイヤレス充電器を買わなくてはなりません(それも、愛用のデバイスがその規格に対応しているならば、という条件付きです)。しかも、対応している場合でもそれほど高速とは言えません。
残念ながら、ワイヤレス充電器に高性能の電源アダプターをつないでも、充電器の最高性能を上回るスピードでの充電はできません。
そうした意味で、ワイヤレス充電器はデバイス自体と同様のボトルネックと言えます。充電器ごとに決まっている最高速度に達すると、それ以上スピードアップする方法はないからです。