2021年7月末で惜しくもスマートフォン市場から撤退してしまったLGエレクトロニクス。デュアルディスプレイカバーで2画面が使えるスマートフォンを次々と投入したり、本体を「T字」に変形できるデュアル画面端末を出したりするなど、他社にはない製品を多数展開していました。2020年発売の「VELVET」は本体の仕上げも美しく、デザイン+2画面という2つの方向性を狙った製品でした。
しかしLGに限らず、どのメーカーも販売数を稼げる売れ筋モデルは、派手なフラグシップ製品ではなく、ミドルレンジやエントリーモデルであることも事実です。LGが2020年夏に出した「Q92」は5G対応でインカメラも高性能、若い世代に売れまくるはずだった戦略的モデルでした。
LGのミドルレンジ5Gスマホ「Q92」既に市場から撤退したにもかかわらず、どこからかこんな製品が流れてくるのが香港市場の面白いところ。ということで筆者の住む香港の輸入スマートフォンショップのいくつかの店で、Q92がかなり安い価格で売られていました。プロセッサはSnapdragon 765G、カメラは4800万画素+800万画素超広角+200万画素マクロ+500万画素深度測定。背面はカメラ部分を目出させないシンプルな仕上げです。
クアッドカメラを搭載しながらすっきりしたデザイン今なら中国メーカーのエントリー5Gモデルのスペックといえるでしょうか。韓国では4万円台で発売され、3200万画素のインカメラを搭載することから、セルフィー需要にも応える若い世代向けの製品として売れまくるはずでした。しかしSamsungもGalaxy Aシリーズを次々出し、ミドルレンジ市場でも製品数で圧倒。ということでQ92の販売数は思わしくなかったようです。
電源キー周りもちょっとしたデザインの工夫を凝らしている韓国向けの製品なので、キャリアの5G関連アプリが多数インストールされています。マルチカメラ配信やVR、ARなどさまざまな5Gサービスを展開していることが、これらアプリからも分かります。ちなみに筆者はK-POPアイドルのステージをメンバーごとに専用カメラで視聴できるアイドルライブ放送が気に入っています。
入手したのは韓国キャリアLG U+向けモデル。5Gサービスのアプリが多数入っているなお、韓国販売品のため国内3キャリアの電波は自動で選択。ネットワークまわりの設定にちょっと癖があります。海外で海外キャリアのSIMカードを使うときは国際ローミングメニューでネットワークを切り替えます。なおQ92では香港キャリアの5Gの電波はつかめませんでした。
国際ローミングメニューからネットワークの手動設定を行うカメラの機能としてはASMRやYouTubeライブへのカメラからの直接配信など、韓国ユーザーの好むものも搭載。このあたりの機能は韓国のみならずLGスマートフォンの固有機能として、もっとグローバルにアピールしてほしかったところかも。まあ今となっては遅すぎますが。
カメラを使って手軽にASMRを撮ることができるYouTube配信もカメラから一発でできる実は筆者は、今でもたまにVELVETにデュアルスクリーンを付けて動画を見るなど活用しています。LGのスマートフォンは決して悪い製品だったのではなく、マーケティングや市場展開など製品以外の部分でも他社に負けてしまったのではないかと筆者は個人的に考えています。いつの日かLGがまたスマートフォン市場に帰ってくることを願いたいものです。
数年後のカムバックを期待して、あえて今の時期にこのQ92を購入した