既報だが、Pico Technology Japan製の法人向けスタンドアロンVRヘッドマウントディスプレー(HMD)「Pico Neo 3 Pro」が7月下旬に発売される。
Pico Neo 3 Pro
Pico Technologyは2015年3月に創立した北京の会社。スマホを入れる簡易的なVRヘッドセットのPico 1などから始まり、Snapdragon820を搭載したPico Goblinから本格的に世界市場でデバイスの販売を開始している。
日本でも数多くのアミューズメント施設やエンタメ用途などで採用され、直近ではソフトバンクセレクションにて「Pico G2 4K」が販売されている。
中国では5月11日から「Pico Neo 3」を発売しており、日本円で4万1~2000円くらいで販売。発売後3分間で2000台を突破、14時間で1億7000円くらいの売り上げとなるほど、人気を博している。そして、同社のCEOは、中国国内で1年から1年半くらいで100万台を目指しているとのこと。
一方、日本国内では、コンシューマー版の販売はなく法人向けの「Pico Neo 3 Pro」が販売になる。Pico Neo 3にはアイトラッキング対応の「Pico Neo 3 Pro eye」もあるが、今回メディア向け体験会にて「Pico Neo 3 Pro」を触る機会を得たので、その体験した内容をご紹介したい。
「Pico Neo 3 Pro」は、Pico Neo 2の後継モデルでありプロセッサーにQualcomm XR2を採用。6GB RAMを備え、256GBのストレージを内蔵する。解像度は両眼3664×1920ドットで、視野角は98度。最大リフレッシュレートは最大90Hzになっている。
左がPico Neo 2、右がPico Neo 3 Pro。基本的なデザインは踏襲しながら、トラッキングカメラがPico Neo 2の2ヵ所から4ヵ所に増えている
外部スピーカーはPico G2 4KなどはHMDの下部についているが、左右のヘッドバンド部分に備わっている。耳に近い位置になったため、よりステレオで広がりのある音でVRが楽しめる
付属のコントローラーも左のシンプルな棒状のモノから、右側の競合のOculus Quest 2に似た形状の光学式のモノに変わった
Pico Neo 3のコンシューマーは背面に何もなかったが、Pico Neo 3 Proにはダイヤルがあり、緩く被った後にダイヤルで微調整してフィットさせられる。また、ヘッドバンドも柔らかい素材ではなく、固いプラスチックになったため安定性があり、ダイヤル搭載により着脱がよりし易くなっている
加えて、Pico Neo 3よりもUSB Type-Cが1つ多く搭載している。PCとはUSB Type-CからDisplayPort接続をする専用ケーブルにて接続。無線LAN接続よりも安定したリモートプレイが可能としている
瞳孔間距離(IPD)は、物理的に3段階で変更可能。また、顔に接触する素材は、Pico Neo 3が競合他社と同じような汗を吸い取る素材であるところ、Pico Neo 3 Proは汗や空気を通しにくく、ウェットティッシュでふき取り易いPU(ポリウレタン)フォームになっている
Pico Neo 3 Proは、無線LAN経由または有線でPCに接続し、SteamVRのアプリやゲームも楽しめる。実際にPCと無線LAN接続した状態で、ビートを両手の剣で斬っていく大人気VRリズムゲームの「Beat Saber」を体験。
遅延を感じて、自分の思うようにビートが切れない、壁を避けられないということはない程には、「Beat Saber」が無線LANで快適にプレイできた
本機はWi-Fi 6およびBluetooth 5.1に対応。TP-Link製のWi-Fi 6ルーターに接続していたようだが、最新の高速通信接続なら無線LANとは思えないほどにコントローラーは追従し、映像が通信速度が足りずに低解像度化しているようには見えなかった。
さらに、8K動画&静止画の360度映像、2D映像を視聴。8Kの360度動画は、若干パワー不足があるのか多少カク付いて、長時間視聴していると酔いを感じそうだったが、映像は非常に高画質。
筆者は競合で解像度が5KのVIVE Focus 3も体験しているが、変わらないほどにスクリーンドア感を覚えなかった。同じソースを連続で見たら、多少は違いが分かるのかもしれないが、4Kでも十分高い実在感が得られる体験ができると感じた。
また、VR/AR/MRクリエイティブプラットフォームとしてアーティストに空間表現の場を提供する「STYLY」も体験。複数人が同時にサービスにログインし、360度で撮影した映像をCGにした寺院やCADで作られた建築物、360度のアート作品などが楽しめた。
線で描かれた複数の人が同時にVR空間にアクセス。遠隔でホストが案内し、全員を一ヵ所に集めたりもできる。VRHMDさえあれば、観光ツアーなども行なえるようだ
360度をキャンパスに見立てた非現実的なアート作品なども楽しめる
また、Pico Neo 3 Proは、Wi-Fi経由でブラウザーから複数のデバイスの管理が可能なプラットフォーム「ArborXR」にも対応。さらに、VRライブ配信が可能な「Blinky」にも対応するとのこと。
「ArborXR」では、ブラウザーから複数の端末のバッテリー状況や無線LAN、ストレージの容量なども確認可能。アプリのインストールも遠隔で行なえるという
Pico Neo 3 Proは、競合のOculus QuestのようにSNSアカウントとの連携も必要なく、購入後にアプリをインストールすれば、すぐに使えるのも特徴。
また、同時再生システムも用意。コントロール側のPCやタブレットを使い、ローカルネットワーク経由で複数のクライアント(Pico Neo 3 Pro)を制御し、同時に同じ動画などのコンテンツを再生できる。
同時再生システムは、学校教育やエンターテイメント、商品発表会などで活用できるとしている
ソフトウェアを使って、複数のクライアントへの同時再生を可能とする
このソフトウェアでは、視聴者が見ている映像をリモートで映し出し、視聴者がどこを見ているのかも確認できる。
視聴者の首の動きに追従し、360度映像のどこを見ているかも確認できる
また、Pico Neo 3 Proでは事前に設定することで、視聴者がHMDを被ると自動で動画が再生、外すと再生位置が最初に戻るといった自動再生システムも活用できる。
従来は、VR体験する前に視聴者にHMDの操作方法をレクチャーする時間を必要としたが、自動再生システムがあれば、そうした手間がなくなり、美術館などでHMDを置いておくだけで被って見るだけと、視聴者が迷わず簡単にVR映像が体験できるという。
加えて、ランチャーカスタマイズシステムでは、VRのホーム画面の背景を変えたり、配置するアプリケーションを変えたりと、自分で自由にカスタマイズできる。これにより、企業側が自分たちのロゴを使ったりと自由に利用シーンごとに変えられるという。
Pico Neo 3 Proは7万7000円くらいからと、法人向けとしては近い性能の競合製品よりも格安で、高解像度のVRHMDを実現しているという。さらに、同社はBtoC向けの資金調達もしており、いつかになるか分からないが日本でコンシューマー向けVRHMDの普及も検討しているという。
VRはコロナ禍の昨今、アミューズメント施設など屋外体験はなかなか厳しい状況だが、遠隔で動きを持って第3者とコミュニケーションが取れる技術としても再注目されているところもある。
Picoについても今後の活用シーンやコンシューマー向け製品の発売と、今後の動向に注目していきたい。
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