中国Huawei Technologies(ファーウェイ)は2020年7月28日、同社主催のオンラインイベント「Better World Summit 2020」における基調講演「5G Brings New Value to Industries」の概要を公開した(Huaweiのニュースリリース)。今後、5Gが産業デジタル化の基盤になるとし、AI(人工知能)、クラウド、コンピューティング用途のアプリケーション開発と同時に、エネルギー効率改善、新たな産業価値創出なども後押しするとしている。
出所:Huawei[画像のクリックで拡大表示]5Gは、人を中心としたデジタル接続から、ものへの接続に用途を広げ、次の4つの重要な変化を生み出す。
ネットワークサービスの多様化:一般的なモバイルインターネットアクセスに加えて、無線による高解像度動画生配信や遠隔治療、遠隔管理、スマートマニュファクチャリングなど、各種の産業アプリケーションを可能にする。
包括的機能の提供:従来の下りリンクに加え、上りリンク方向の高速大容量通信も実現。産業アプリエーションに向けては、高精度ポジショニング機能や高信頼低遅延通信も拡充する。
多彩な端末への対応:3G、4Gで主要な端末だったスマートフォンに加え、5Gでは、CPE(customer-premises equipment、顧客構内装置)やカメラ類、UAV(unmanned aerial vehicles、無人飛行機)など、より広範な端末がネットワークにアクセスされるようになる。
接続価値の向上:5Gでは人に加えてものも接続されるようになり、快適なユーザー体験に加えて、産業界が必要とする高いエネルギー効率や作業環境の改善、持続可能な開発にも貢献する接続が提供されるようになる。
5G標準化仕様に基づく多様なネットワークサービス
3GPPの基幹ネットワークから無線ネットワーク、端末まで一貫したスライシングアーキテクチャーを利用することで、同一ネットワークインフラ上での仮想ネットワーク多重化が可能となる。ネットワークスライスは、ネットワーク側で自動的に生成、管理、操作され、各スライスは、そこで動作する産業用アプリケーションの各種要件を満たす独立したネットワークとして利用できる。
3GPPリリース15では、高解像度動画生配信や遠隔治療、公共安全といった、広い周波数帯域を必要とするサービスに重点が置かれて標準化が進められた。先日、仕様標準化が完了したリリース16ではURLLC(ultra-reliable low-latency communication、超高速低遅延通信)をはじめとした新機能を追加。これを機に、産業向けアプリケーション開発が進むと同時に、通信事業者でも市場拡大に向けた活動が始まっている。
急速に進む5G端末開発
移動通信関連の業界団体GSA(Global mobile Suppliers Association)が行った最新調査によると、5G対応のモジュールは、49種が既に販売開始され、そのうち54%超が2020年末までに商用製品に採用される予定となっている。5G対応モジュールが続々開発されるにつれて、産業向けCPEや、5G対応セットトップボックス、5G対応車載向け端末(T-Box)など、多様な5G端末が市場に出回るようになる。
既に、産業向け5G対応CPEは、港湾機械の遠隔制御サポート用に利用されており、5Gカメラも、ブロードキャスト生配信用として、エベレスト高度測定プロジェクトにも採用されている。中国では今後、2万~300万台の5Gモジュールが市場に投入される予定となっており、個々の価格も2021年までには20米ドルにまで下がると予想される。こうした参入障壁の低下により、産業向けアプリケーションの開発はさらに進んでいく。
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スマートポートに向けては、5Gの高速大容量低遅延通信を使って、クレーン操作を現場から遠隔管理にシフトすることで、運用コストが著しく低減する。従来の現場での1人1台のクレーン操作から、遠隔管理では、全てのオペレーターが同時に4台の操作が可能となる。これにより、人件費の7割削減に加えて、1時間にコンテナ25~30個分の取り扱いが可能になる。加えて安全上のリスクも最小限に抑えるなど労働環境の改善も実現する。
5Gを採用することで、エネルギー効率改善やエネルギー消費量、二酸化炭素排出量削減と、それに伴う持続可能な社会の実現も可能となる。5Gモジュールは4Gに比べてエネルギー消費は抑えつつ50倍の容量を実現。つまり、ビット数当たりのエネルギー効率が50倍高くなる。また、医療サービスにおいては、遠隔診療を導入することで、患者数や診断の質を低下させることなく、従来の対面医療を削減できる。物理的な移動が減ることで、温暖化ガスの排出量は以前に比べて99.6%も削減する。
5Gによるイノベーションとコラボレーションで生み出される産業価値
さまざまな産業アプリケーション展開に向けて、5Gネットワークの機能強化も進んでいる。例えば、TDDネットワークはeMBB(enhanced Mobile Broadband、高速大容量通信)実現に向けて導入され、上りリンク時に比べ下りリンク時の性能が圧倒的に高いが、産業のデジタル化に必要な大容量低遅延の上りリンクという要件は満たしていない。
この課題解決に向けてHuaweiでは、産業界のパートナーと協力して、TDDをFDD周波数帯で補完するSuper Uplinkソリューションを開発。実際のネットワークを使った検証でも、遅延時間が30%低減され、上りリンク時速度が4倍向上したとする。上りリンク用のすべての周波数帯を組み合わせることで、ギガビット単位の通信も可能となる。
産業用アプリケーション開発と新たな産業価値の創造には、ビジネスモデル、仕様標準化、政策支援、技術革新、端末の多様化が不可欠となる。Huaweiでは、今後も各種業界と連携し、徹底的に議論を進めていく。
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